悠久の果てに…(創作1byむく)

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第九章 デート!?

 
 オリヴィエとリーシアスが公園に行くと、ランディ、ゼフェル、マルセルが一緒にいた。
「あの子達、すぐ喧嘩するくせに、なんだかんだ言っても一緒にいるのねー。」
とオリヴィエがリーシアスに笑いかけていると、マルセルがオリヴィエに気づいた。
「オリヴィエさまー、こんにちはー。」
駆け寄ってくる。その後ろにランディ、ゼフェルが続いてきた。
「あれ?オリヴィエさま、どなたかご一緒なんですか?」
ランディがオリヴィエの後ろに隠れるようにしているリーシアスに気づき、言った。
「ほら、恥ずかしがってないで、出ておいでよ。」
とオリヴィエが言うが、リーシアスは内心、冗談じゃないよーと思い、どうしてもオリヴィエの背中に隠れようとしてしまう。それを見て、ランディは単純に恥ずかしがり屋の女の子なんだな、と思った。

 「こんにちは。おれは、ランディと言うんだ。君は?」
なるべく優しく声をかけると、そのコは、おそるおそるという感じで顔を上げてランディを見たが、返事はない。それはそうだ。声を出したらばれてしまうに決まっている。仕方ないねぇ、という感じでオリヴィエが言った。
「この子は、小さいときに病気をして、声が出ないんだ。あまり人に会ったこともないので、恥ずかしがりやだし…」
「そうなんですか。」
ランディの瞳が曇った。マルセルも哀しそうな表情になった。その後ろでゼフェルだけが無表情である。オリヴィエの連れの少女の瞳をじっと見てる。リーシアスと同じ瞳の色だ。髪の色も同じだし、顔立ちも似ている…もし、あいつが女だったら、こんな感じかな、と考えた後、自分のその考えにうろたえた。
(あいつが女だったら、だぁ?おれはいってー何考えているんだっ)
そんな自分の気持ちが周りに悟られるような気がして、ことさら無表情を装ったのだ。

「それで名前はなんと言うのですか?」
とランディがオリヴィエに聞いた。急に聞かれて、オリヴィエが口ごもった。
「ええと、リー、リー…」
それを聞いてランディが勘違いした。
「リーリィって言うのかい?」
そのコにやさしく話しかける。
「そ、そう。リーリィって言うのよ。」
オリヴィエがやけくそで言った。そのコも小さく頷いたようだ。
「ぼくはマルセル、よろしくね、リーリィ」

 マルセルがそう言った後、しばしの間があった。当然ゼフェルも名乗るのだろうと皆が思っていたからだ。しかし、ゼフェルは黙ったまま。ランディとマルセルが振り返ってゼフェルを見る。オリヴィエとリーシアス(とは彼らは知らないが)もゼフェルを見た。
「おい?ゼフェル?」
ランディが声をかける。はっとするゼフェル。みんなが自分を見てる。
「あ、お、おれは、ゼフェルだ。」
うろたえぎみに言う、その様子がおかしかったのでリーシアスは思わずくすっと笑った。ゼフェルはムッとした。
「おれはもう行くぜ。腹減ってんだからな。」
そう言ってさっさと歩き出していってしまった。

 オリヴィエも、いつまでも一緒にいるのはさすがにまずいなと思い、
「この子を連れていくところがあるので、わたしたちもそろそろ行くね。」
とリーシアスを連れて、ゼフェルが行ったのとは反対方向に歩き出した。
「あ、はい、オリヴィエさま、リーリィ、またね。」
「さようなら、オリヴィエさま、リーリィ。」
ランディとマルセルが挨拶すると、彼女も振り返って小さく頭を下げた。可愛い子だな、また会えるかな。ランディはちらっとそう考えて、ゼフェルを追いかけた。
「ねー、ゼフェルー。一緒にランチ食べるんじゃなかったのー?」
マルセルも後を追った。

 呼ばれたゼフェルが立ち止まり、振り返ってマルセルの方を見た。その向こうにオリヴィエとリーリィの後ろ姿が小さく見える。ゼフェルの脳裏にさっきのリーリィの笑顔が浮かんだ。その途端、なんだか頬が火照った気がして、手の甲で顔をこすった。
「ちぇっ」
小さくつぶやいたが、リーリィの笑顔はなかなか彼の脳裏から消え去ってくれなかった。

 「結構スリルあって、面白かったねー。」
オリヴィエが話しかけると、
「でも、寿命が縮むかと思いました。もう帰りましょう。」
とリーシアスは半分泣いたような顔で答えた。
「まだ来たばかりじゃないの。わたしたちもお腹空いたね。なんか食べよう。」
そう言ってオリヴィエはリーシアスを連れてレストランに入った。そこには、オスカーがいた。連れは見知らぬ女性である。
「あーあ、聖地って狭いよね。なにもこう次から次へと顔を合わせなくても…」
とオリヴィエがリーシアスに苦笑する。オスカーもオリヴィエたちに気づき、席を立って近寄ってきた。オリヴィエが女の子を連れているので興味を持ったのだ。しかし、近くまで来て、リーシアスの顔を見ると、ちょっと目を見開き、しばらくじっと見つめた後、言った。

 「オリヴィエがどこのお嬢ちゃんを連れているのかと思ったら、リーシアスじゃないか。」
「あ、しっ」
オリヴィエがきょろきょろあたりを見回したが幸い他には関係者はいないようだ。その様子にオスカーがふっと笑った。
「やはり、そうか。このおれの目はごまかせないぜ。」
「やーねー、あんた、いつから知っていたのさ。このコのこと。」
オリヴィエがひじでオスカーをつつく。
「ん?いつからかって?もうだいぶ前からだぜ。最初は<坊や>って呼んでいたのに、途中から言わなくなっただろ?え?気づいてなかったのか?」

 オスカーにそう言われて、リーシアスは、あ、と思った。確かにそうだ。相変わらずランディやゼフェルには坊やと呼びかけて不評をかっているのに、リーシアスにはいつのまにか言わなくなっていた。
「今日はお嬢ちゃんと呼ばせてもらっても、いいのかな?」
手を伸ばして、リーシアスの頬に触れる。オスカーの瞳に見つめられて、リーシアスはどぎまぎしてしまった。
「ちょっと、あんた、連れほっといていいの?怒ってるんじゃない?」
オリヴィエが言うと、オスカーはあわてて彼女の方を見た。
「そうだ、食事の途中だったっけな。それじゃ、またな、お嬢ちゃん。」
リーシアスにウィンクしてから、テーブルに戻っていった。

 「まったくもう、女と見たら、見境がないんだから。」
オリヴィエはまだぶつぶつ言っている。リーシアスはおかしくなってくすくす笑った。オリヴィエがリーシアスを見る。
「そういうふうに笑ってるのが一番いいよ。明日からまた、つらいこともあるかもしれないけれど、今日はそんなこと忘れて、楽しくすごそうねー。」
それを聞いて、リーシアスは心が暖かくなる気がした。テラスのテーブルについて、食事を始める。日差しが柔らかい。心地よい風が吹いている。穏やかな日の曜日だった。

第十章
(第九章 コメント)
 
むく 「ということで、お子さま3人組には一応ばれなかったということになりますか。」
ランディさま 「え?なにがばれなかったの?」
むく 「あ、ランディさま。いらしてたんですか。いえ、なんでもありません。」
ランディさま 「そういうの、なんか気になるな。」
むく 「気になさらないでください。なんだかば〜び・どらまの続きみたいですね、このコメント欄も(^_^;)」
ランディさま 「そういえば、そうかも。顔アイコンも入れたら?あはは…」

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