ランディが戻っていった後、私邸に帰ろうと廊下を歩いていたリーシアスは、本当に自分はランディを好きなんだろうかと考えていたので、オリヴィエがじっとこちらを見ながら待ち受けているのに気づかなかった。すぐそばまで行って声を掛けられて初めて気づく。
「はーい、リーシアス。どうしたの?なんか暗いわねー。」
実は…、などと言うわけにもいかないので、
「いえ、別にそんなことないです。」
と答えたが声に元気がない。そんな返事でオリヴィエが許すわけがない。
「ふうん。ねぇ、今度の日の曜日、暇ー?」
と聞いてくる。何かたくらんでいる表情だ。
リーシアスは、日の曜日も特に用事がないときは執務室に来て、本を読んだり、パソコンでネットを楽しんでいた。自分の屋敷への土木工事は諦めて、執務室にパソコンを置き、ゼフェルにネット接続してもらったのである。たいがい、アンジェリークかランディかゼフェルがやってきて、外に引っ張りだされることになるのだが。今度の日の曜日も、特に予定があるわけではないので、
「特に予定はありません。」
と答えると、
「ならさ、ちょっと秘密のイベントがあるんで、うちに来られないかなぁ?」
とオリヴィエが言う。
「なんですか?」
リーシアスが問うが、いたずらっこのような顔で笑って、
「秘密って言ってるでしょぉ。来ての、お、た、の、し、み。どう、来ない?」
と言うだけだ。そんなオリヴィエを見ていたら、リーシアスはなんとなく心が軽くなるような気がした。
「わかりました。伺います。」
「わたしんちの場所はわかるぅ?」
「はい」
聖地のパトロールをするようになったので、すっかり地理は頭に入っている。
「それなら、朝から来てね。いい?秘密なんだから誰にも言っちゃだめだよー。」
日の曜日の朝、リーシアスはオリヴィエに言われたとおり、誰にも行き先を告げずにオリヴィエの私邸を訪れた。
「待っていたのよ、子猫ちゃーん。」
朝からオリヴィエはなんだかハイテンションである。
(子猫ちゃん?)
リーシアスが驚いているのに、お構いなしに奥の部屋に連れていく。メイド姿の女性が5人、待機していた。なんだろう?と思っていると、いきなりその5人に取り囲まれて、手足を押さえられてしまう。そんなことは予想もしていなかったので、抵抗する間もなく動けなくなってしまった。
オリヴィエは、
「それじゃ、よろしく頼むわねー。わたしはあっちの部屋で待ってるから。」
と、そのメイド達に言うと、リーシアスが、
「オリヴィエさま、これはいったいどういうことなんですか?」
と言うのにも耳を貸さずにさっさと部屋を出てドアを閉めてしまった。オリヴィエが部屋を出ると、5人のメイドは行動を開始した。リーシアスの服を脱がせたのである。
「な、なにを……!」
しかし、さすがに5人がかりでは抵抗できない。しかも、相手はオリヴィエの使用人、やたらと乱暴なことをするわけにもいかない。ついに、守護聖の正装を脱がされて、代わりに淡いオレンジ色のワンピースを着せられた。膝より少し短めの丈のフレアースカートが揺れる。着せ終わると、メイドの1人がオリヴィエのいる部屋のドアを開け、声をかけた。
「お支度が終わりました。」 |