アンジェリークはそんなリーシアスに見とれていたので、
「アンジェリーク?どうしたの?」
と言われて、とびあがるほど驚き、お辞儀をすると
「失礼します!」
と言って勢いよく部屋を出て行こうとした。ところが、ちょうどランディがリーシアスを訪ねてきて、まさにドアにノックをしようとしていたところだったのだ。いきなり内側から開いたドアをランディはかろうじてよけたが、跳び出してきたアンジェリークをよけることはできず、胸に頭突きをくらう形になった。
「う…、あ、アンジェ…大丈夫かい?」
誰が見てもダメージはランディのほうが大きいという感じだったが、ランディはアンジェリークを気遣って声をかけた。だが、アンジェリークはランディの顔を見た後再び頭を下げ、
「ランディさま、ごめんなさい。」
とだけ言うと、足早に歩み去った。
「アンジェリークはどうしちゃったんだい?」
彼女の去るのを見送った後、ドアを閉めながらランディがリーシアスに尋ねた。
「それが、わたしにもよくわからないんだ。彼女は育成のお願いに来たんだけど…」
リーシアスが答えると、ランディはここへ訪ねてきた用件を思い出した。
「あ、やっぱり、育成頼まれたんだね。今から星の間に行くのかい?」
「今?あ、えっと、忘れるといけないので、早めに済ませておこうかとは思っているけど。」
「そうかい。では、今行こう。一緒に行くよ。」
ランディの言葉が意外だったので、リーシアスは首を傾げて、
「星の間の場所は教えてもらったけど?」
と問い返したが、ランディが
「いいから、いいから、さぁ、行こう。」
と、にこやかに言うので、とにりあえず一緒に出かけることにした。
星の間に着くと、扉の前で
「それじゃ、おれはここで待ってるからね。」
とランディが言った。リーシアスにしてみれば、なんのためにランディが付いていてきたのかわからなかったが、扉を開け、星の間に入った。中へ入るのは初めてである。入った途端に、圧倒された。宇宙空間に溢れるさまざまなエネルギーが凝集され押し寄せてくる。無重力空間に浮いているようで、底のない空間に果てしなく落ちていくような気さえする。そして、心の中に数え切れないほど多くの声なき声が響き渡る…全宇宙の生あるものの叫びに満ち満ちているのだ。
サクリアの送り方は、誰に説明されるともなく、力に目覚めたときから感じ取っている。送る先だけは間違えないようにと、アンジェリークの育成中の聖獣アルフォンシアに慎重にしかしたくさんの地のサクリアを注ぐ。新しい惑星がひとつ、誕生した…
|