そう言われてロザリアがアンジェリークの方を見ると、彼女は、ちょうどランディに声をかけられてリーシアス達の話の輪に加わったところだった。確かにアンジェリークは、他の人が話をしているときもちらちらとリーシアスを気にしている様子だ。でも、とロザリアは思った。
「ルヴァの考えすぎですわ。今日初めて会ったのではありませんか。リーシアスは綺麗なコだから、アンジェリークが気にしてもおかしくないと思います。」
「そうだといいんですけどねー。」
「ルヴァ。そなたの方こそ、なぜアンジェリークがリーシアスばかり見てると気付いたのだ?」
とジュリアスに言われ、ルヴァが、
「それはー、その…」
と答えにつまるのをちらっと横目に見ながら、
「いずれにせよ、落ち着いたら私から皆様に事情をお話することにしていますから。」
とロザリアが言った。
「今のところ、知っているのは誰と誰なのか、確認しておきたいのだが。」
というジュリアスの質問にロザリアが答えた。
「この3人以外では、陛下、エルンストと数名の研究員、リーシアスの屋敷で働く者のうちごく身近な者数名、ティムカ、メル、そして日の曜日に公園に出店している商人のチャーリー、ですね。」
ジュリアスが眉をひそめる。
「ティムカとメルとチャーリーがなぜ知っているのだ?」
「ティムカとチャーリーは聖地に来る前から、リーシアスと直接の知り合いなんだそうです。メルはさきほどリーシアスに聖地を案内したときに偶然会って、リーシアスの運勢を占ってくださるというので、お任せしたら…見抜かれてしまいました。なんでも、男性と女性とでは、水晶球に映されるオーラのようなものの色が微妙に違うのだということで…さすがに腕のいい占い師だけのことはありますわね。みなさまには当面内密にとは伝えておきましたが…。」
「それでは、場合によってはそなたが話す前に露見することもあり得るのだな?」
とジュリアスがさらに問うので、ロザリアは頷きながら、
「ええ、ですから、状況を見ながら真実をお話する時期を見極めます。」
と答えた。
ジュリアスたちが声をひそめるように話しているところへ、
「ねぇねぇ、深刻そうになんのお話ぃ?みぃんなでリーシアスの方を眺めながらさ。」
と突然オリヴィエが割り込んできた。一同、はっとなったが、
「あー、リーシアスはとても博識なんですよー。」
と、ぼーっとしているようでも、とっさに機転をきかしたのはルヴァである。
「さきほど皆様にお集まりいただく間に、引継のこともあって、いろいろお話したのですが、実にいろいろなことをよく知ってますねー、あのコは。」
「へぇ、そうなんだ。例えば?」
半ば疑っているのか、しっかりつっこむあたりがオリヴィエらしい。
「そうですねー、例えばわたしが好んでいろいろなものを取り寄せている辺境の惑星、あの惑星のことも知っていたんですよ。」
これには、オリヴィエだけじゃなく、居合わせた者全員が驚いた。
「あの、トーフとなんたらのスープ、とか、ナガシソーメン、とかを?」
半信半疑でオリヴィエが問う。これらは以前ルヴァがオリヴィエに紹介したことのあるものである。
「あ、トーフとネギ、ですが…食べ物の話はしませんでしたけどねー、伝統武芸の話をちょっと…それから、専門が工学系ということで、技術の話もいろいろ知っていて、そのあたりになると、わたしにもよくわからないことをいろいろ知っているようでしたよ。」
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