ロザリアはため息をつき、リーシアスを見た。
「確かに異例のことではありますが、事実なんです。リーシアスが女性であることは、当面の間、他言しないようお願いします、チャーリー。」
言われたチャーリーはうなずき、やっと落ち着いて話し出した。
「そないなこともあるんですなぁ。そや、おれの正体も秘密なんで、そこんとこよろしう頼みまっせ、殿下。あ、殿下はまずいわ、えと、リーシアス、さま。」
そのとって付けたような言い方には思わずリーシアスも笑い出した。
「そや、ティムカさまも聖地においでになってまっせ。」
「え?ほんとに?」
驚くリーシアスにロザリアが言った。
「ええ、ティムカには女王候補の品位の教官をお願いしています。お知り合い?なのよねぇ…」
最後の方はあきらめ気味の口調だ。
「でも、それじゃ、白亜宮の惑星の王は……?彼がそんなに長く国を留守にして大丈夫なんですか?」
ここで初めてリーシアスに聖地の時の流れの例外を告げていないことをロザリアは思い出した。
「女王試験実施中は聖地と外界の時間の流れは同じになるように調整されています。でないと、女王にならなかった候補の方が、故郷に帰った場合に困ったことになりますからね。」
「それじゃぁ…」
リーシアスの両目が大きく見開かれた。そんなリーシアスの胸中はロザリアは察して言った。
「そうですね、今回の召還は非常に慌ただしいものでしたから、女王試験が終了する前であれば、一旦里帰りすることも可能です。…もしもその気があるのであれば。」
すでに決意して出てきたのであれば、もう一度、今度こそ今生の別れを告げに行けというのは、かえって酷ではないのだろうか、そういう思いが最後の一言を付け加えさせた。リーシアスにもロザリアの言わんとするところは通じたようで、
「そうですね。」
と言ったきり、黙ってしまった。
その場の沈黙に耐えられなくなったチャーリーがまず口を開いた。
「そや、ティムカさまにもリーシアスさまの件、口止めしとかなあかんのでは?ロザリアさま」
「口止めって、そんな人聞きの悪い…でも、まぁ、そうねぇ…」
バツが悪いようにロザリアが口ごもると、チャーリーが、
「ほな、おれからティムカさまにはいうときましょ。」
と言ったので、
「それでは、お願いしますわ。」
と言い残し、ロザリアとリーシアスは公園を後にした。 |